ライダー2号誕生、実は……

 

番組では、当初、仮面ライダー2号は登場する予定ではありませんでした。
しかし、思わぬアクシデントにより、ライダー2号が誕生しました。

第9話〜10話の撮影中、本郷猛役の藤岡弘さんが、オートバイで走行中にバランスを崩して転倒し、電柱を支えていたワイヤーに足を引っ掛けて、体が空中高く飛び、地面に落下しました。藤岡さんは、大腿部複雑骨折の重傷で、全治3〜6ヵ月と診断され、出演は不可能となりました。

困り果てたスタッフは、番組続行のために、いろいろな案を出しました。
佐々木剛さんに、本郷猛の役をさせるという案も出ました。しかし、藤岡さんと佐々木さんでは、全くタイプが違い、同じ役をやるには、あまりにも不自然です。当時のスタッフのひとりは、「フィクションの世界に視聴者と共に遊ぶという私の感覚には我慢できないやり方だ」と語っています。
本郷猛に壮烈な最期を遂げさせ、ライダー2号として一文字隼人を登場させようかという案も出ました。しかし、そういう設定にすれば、藤岡さんの怪我が完治しても再登場できませんし、正義のヒーローが悪に敗れて死ぬということは、子供たちの夢を壊すことになります。
これらの案は、当然不採用となり、あくまで、藤岡さんが復帰するまでの応急処置をということで、話を進めました。

いろいろ考えているうちに、ひとつの案が出ました。
それは、「本郷猛は、ヨーロッパのショッカーと戦うため、日本を離れたという設定にして、ライダー2号を登場させよう」という案でした。この設定であれば、藤岡さんの怪我が完治すれば、主役として復帰することも可能です。もちろん、この案が採用されました。

第13話までは、前編までの藤岡さんの登場シーンのフィルムと、スタントマンが演じた仮面ライダーのフィルムをつなぎ合わせて制作し、声は、声優の納谷六朗さんが吹き替えをしました。そして、「ライダー2号、誕生の経緯」に書いたような筋書きを作り、第14話から、仮面ライダー2号・一文字隼人が登場しました。

困り果てた末に考えた応急処置でしたが、一時的に2号が登場したことは、番組にとってプラスになったでしょう。2号が登場するようになって、旧1号には無かった変身ポーズも登場し、仮面ライダーはますます人気者になりました。それに、藤岡さんの復帰後、ライダー1号と2号の共演も実現し、当時の子供たちは大喜びしたはずです。そして、1号はパワーアップし、2号とは違った変身ポーズを披露したし、2号とは違った味もあり、無比のヒーローとなりました。もし、始めから終わりまで1号のみが登場していたり、途中から登場した2号が最後までレギュラーで登場していたら、これほどまでに人気は上がらなかったと思います。一時的に2号を登場させたのは、大正解でした。


この記事は、本などを見ながら作成したものであり、ぼく自身は、スタッフとは何の関係もありません。(念のため)

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